第7回陶美展

 

第7回陶美展が無事終了致しました。

冷え込み厳しい時期でしたが、ご高覧くださいましてありがとうございました。

 

会期中、1/25には、受賞者ギャラリートークで作陶への思いをお話する機会をいただきました。

拙い話し方ではありましたが、たくさんのお客様に耳を傾けていただき、感謝申し上げます。

 

その折にお話したことも含め、今回の受賞作品「脱皮」について、書いてみたいと思います。

 

私にとっての陶芸は、自分の思いを表現できるものだと思っています。

自分と作品を重ね合わせて、生き様だったり、生命力やたくましく生きる力などを

形にして伝えることができればと考え、どうすれば表現できるか、

ということをテーマに制作してきました。

 

今回の作品も、そのテーマを軸に、

殻に閉じこもっている自分がいる、その殻を打ち破って、新しい自分に生まれ変わり

力強く頑張って生きていこう、という思いを伝えたいと思いました。

 

「脱皮」とは、昆虫や爬虫類が成長する時にも行われますが、

そうした脱皮そのものの瞬間を捉えると共に、

我々人間も、常に新陳代謝、つまり、脱皮を繰り返して生きているのではないか、

そして、自分の作品も脱皮を繰り返しながら今の作品になってきた、

そんな考えも絡まっています。

 

もう一つのテーマとしては、無彩色へのこだわりがあります。

高校時代、日没後の群青がかった無彩色の空に心をひかれ、色のあるものだけでなく、

色のない世界にも美しさがある、ということに気付きました。

 陶芸を始めてからは、その憧れの色を土によって、いつか表現してみたいと思ってきました。

またその色で、自分のテーマである「生きる力」を表現できたらと、試行錯誤してきました。

ただ土で色を作るのではなく、

表面に施す技法次第で、表情や雰囲気、色合いまでが変わってきます。

触ると堅い陶器なのに、目に映るのは、しなやかさ、力強い動き、

あるいは、柔らかい布のような質感、堅い鋼鉄のような冷たさ。

焼き上げて初めて分かる微妙な変化は、命が宿ったかのようにも見え、

自分でも驚きの連続です。

 

 

今までは、黒一色の無彩色の世界の中で、生命感、躍動感が感じられるものをと、

様々な方法を試してきましたが、今回は「脱皮」ということで、

「新しい自分に生まれ変わり、力強く生きよう」とのメッセージを込めたいと思い、

ポリュウムのある躯体から迸るイメージで、赤を使ってみました。

 

その赤の部分には、針で細かく叩いています。

焼き上げると、表面に変化が表れ、単に飛び出しているのではなく、

しなやかな、意思の強さの感じられるような動きが出てきました。

 

本体の殻の表面は、細い線模様で覆われていますが、2ミリの土の紐を2本ずつ縒って

貼り付けています。タイミングを見計らって、ここも針で叩き、白化粧を叩きつけ、

また針で叩く、を繰り返します。

うねりがあって、波の飛沫のようにも見えますが、殻が膨らみ、凝縮して、破れる、

という動きが弱く、「打ち破る」イメージには近付きませんでした。

これは今後の課題かなと思います。

 

ここ何年かの私の作品は、自分で自分を励ましているような作品が多いのかなと思います。

そんな思いが観てくださる方にも伝わり、少しでも励みとして感じていただけるような作品を

作っていけたらと思います。(2020. 1.29)

 

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