「脱皮」から「萌芽」へ

昨年11月に、京都市京セラ美術館にて開催された「第55回女流陶芸展」では、思いがけず文部科学大臣賞をいただくことができました。

 

実はこの「萌芽」という作品、窯に入るギリギリの90㎝高さまで立ち上げたのですが、予想以上の収縮のため、全体のバランスが崩れて焼き上がったという、ちょっと残念な作品でした。

ただ、まあまあいい色が出せたかなということが救いでした。

 

この色が、審査員の先生方から評価されたようです。

 

中ノ堂一信先生(京都芸術大学名誉教授)からは、直接「色がいいね」とお話しいただき、また外舘和子先生(多摩美術大学教授)は「モノトーンの内に力強い生命感を示している」(陶説より)、大長智弘先生(京都国立近代美術館主任研究員)も「種に施された地文様と芽とが視線を上部へと誘い、色彩をモノトーンにまとめたことで、静かな中にも強い動性を感じさせる作品」(炎芸術より)と評価してくださいました。

 

会場で観てくださった方からも、「どんな状況でも、迷いながらもわずかな可能性に向けて伸びて行こうとする力を感じた」とのお声をいただきました。

 

客観的な評価がこんなに有難いと思ったことはありません。それは確実に、今後の制作に繋がってくれると思います。

 

私達が「生きる力」を感じる瞬間は、本当に様々だと思います。昨年前期までの3年間は「脱皮」し新しく生まれ変わろうとするパワーを表現したいと制作してきましたが、今回は静から動への生命力を、そして次は、また違う意味での力強さを表現できたらと思っています。        (2022. 2. 5)

 

 作品をぐるっと回って観ると、少しずつ違う風景が見えます。

スマホ用QRコード